Arecales Bromhead

フィギュアスケートとか。

アレクセイ・エロホフ (Alexey Erokhov) 選手 2017-18 SP

こんにちは、ヤシの木です。

 

本格的な記事第一弾では、タイトルにもあるように、僕が好きなエロホフくんのプログラム「Lighthouse by Patrick Watson」について語りたいと思います。

 

彼がパーソナルベストを出した以下の動画をもとに語っていきますが、シーズン中細かな変更点もあったので、そこも都度言及していきたいと思います。

 


Alexey EROKHOV RUS Men Short Program - GDANSK 2017

 

冒頭~3A

 

ジャッジに背を向けてスタート。首筋がいいですね(おい)。振り向いて胸元の手を見つめた後、その中にあるものを解き放つような振付が入ります。心の奥底にある思いか何かをそっと開放しているのでしょうか。真実はわかりませんが。

 

ピアノの音に合わせてループターン、上半身の動きが優しいです。歌詞の「leave」の音に合わせてロッカー、同時にふわっと腕を広げます。クロスの後、右足でカウンター、左足でロッカーと、難しいターンをさらっとこなしながら3Aへと入っていきます。左足ロッカーの時手で髪を撫でるようなところも好きです。このさりげなく複雑なことを実施するところも、彼の魅力の一つですね。

 

3Aは歌詞の「Coming in」のタイミングで跳びます。GOEはJGPFのが+2.00と一番高く、ジャンプそのものも素晴らしいのですが、この大会も+1.57と高いGOEを獲得しています。構えが少なく、ジャンプの幅があり、着氷後の流れも申し分ないです。

 

3A~FSSp

 

3Aを着氷後はチェンジエッジでさらに流れを生み出し、そのままロッカー。このトランジションの入れ方は、まさにエテリ組って感じですね。歌詞の「dreamer」に合わせて、右腕を上に掲げて何かを掴むような振付をし、スリーターン後は縮めた腕をふわっと伸ばします。そのまま右足でチェンジエッジをした後、ただちに左足でFSSpに入ります。

 

これらの繋ぎは曲に合わせてよく工夫されてるなと感じます。グレイヘンガウス振付ながら動きは忙しくなく、ちゃんと曲想を反映しながら、かつ片足でトランジションが行われていて、PCSの面で評価される部分ではないでしょうか。

 

FSSp~StSq

 

難しい入り(フライング) - SF - 8回転 - SB でレベル4をとっています。

 

スピンの質は、シーズン終盤のJrWで他のスピンも含め劇的に改善されているので、見たい方はそちらもどうぞ。

 

とはいえ、この大会でもしっかり実施されています。SBのポジションで回転速度が上がるところがいいです。そして何といってもスピンの解き方ですよね。右足に踏みかえた後、左足のトゥをつきながらクルッと回転。この大会では出の部分でちょっと引っかかっていますが、穏やかな曲調を崩すことなく、次の動き、およびStSqに移行できています。

 

StSq~3F+3T

 

ステップはジャッジから見て右奥の角からスタート。チョクトーの後右足のカウンター、歌詞の「When」で左足のブラケットをした後チョクトー、「to find you」で体の向きを大きく変えます。その後左足でロッカーカウンターツイズルループの4連続ターンをピアノの音に合わせて行います。インサイドイナバウアーをして、右足でループターン、そこから右足でロッカーカウンターツイズルの3連続ターン。「dreaming」で顔を上げて腕を左右に広げ、そこから右足で逆回転のツイズル、最後は右足のブラケットで終了します。

 

レベルに関わりそうな部分は大体列挙したつもりですが、どうでしょうか。上半身の複雑な動きがちょっと少なめだからか、JrWを除くとほとんどレベルは3でした。しかし、静かな曲に合わせとても滑らかにステップが踏めていると思います。

 

ステップを終えるとつなぎの動きの後、ジャッジ左側を「into the world」の歌詞に合わせフォアで一気に加速します。森か霧かを抜けて一気に視界が開け、先に見える海と灯台に向かって走り出すような、そんな情景が浮かびます。

 

3F+3T

 

ジャンプ直前のトランジションはチョクトースリーで、割とオーソドックスな形。彼はモホークからも3Fを跳べるのですが、ここはピアノの音にターンをはめるようにするために、この入りにしたのでしょうか。

 

ジャンプ自体はそこまで高さはないものの、軸が細いのと3T前にしっかりためることで回転不足の心配なく降りてきます。この+3Tはコーチのドゥダコフメソッドがしみ込んでるなーと感じます。JGPF後は着氷直後に右腕を掬い上げるような動きが入ります。その後の動きも音楽のフレーズに合わせています。

 

3Lz

 

個人的ハイライト。バッククロスで加速した後、ピアノのポロンポロンという音に合わせ左足、右足と体重を乗せた後、ウォーレイ、チョクトー、その後フレーズの変化と共に直ちに3Lzに入ります。このシーズンまで必須だったソロジャンプ前のステップを、音楽表現にまでしっかり活かしている点で、素晴らしい実施だと思います。

 

3Lzを降りた後は、そのままの足でツイズルを行い次の要素に入っていきます。ここも個人的に大好きな点だったのですが、ツイズルを行うのはこの大会とその後の国内戦の2大会のみで、JGPF以降はなくなってしまいます。怪我の影響があったのかもしれませんが、流れをアピールできるうえに、次の要素のCCSpにも関わっていたであろう部分なので、なくなったのは寂しかったですね。

 

CCSp

 

難しい入り(ウインドミル) - CS - (足変え) - CU - CF  でレベル4をとっています。

 

入りのウインドミルなのですが、JrWなどはウインドミルが中途半端で難しい入りと判断されず、レベル3になってしまっていました。レベル4をとれたのは、前の要素の3Lzの後ツイズルを入れていた2大会のみだったように思うので、そういう意味でもツイズルは大事だったのかな、と思います。

 

他の多くの男子選手と同様、キャメルスピンはスピンの中でも苦手なのかな、と思います。CUやCFについてポジションそのものはいいのですが、回転速度はどうしても落ちちゃってますしね。2017-18シーズンのジュニアはFSSpが必須だったのでCCSpをやっていますが、彼は基本SPでもFPでもFCSpをやっているので、慣れない部分もあったのかな、と推測します。

 

CCoSp~終わり

 

まずスピンに入る前、JrWだと歌詞の「before」に合わせて、ふっと何かに呼ばれたかのようにジャッジの方を向く動きがあります。動きが追加された後の方が好きですが、この大会の頃は時間的にも少し厳しかったのかもしれません。

 

(キャメル) - (シット) - 同じ足でのスピン中のジャンプ - (シット) - US - (足変え) - UF - NB - (アップライト) でレベル4をとっています。

 

ピアノの盛り上がりに合わせシットポジションで加速し、ボーカルの声に合わせUSで上を向きます。足変え後のUFとNBはポジションの移行がスムーズです。

 

最後のアップライトのポジションからスピンを解く際、手を合わせた後腕を広げ、それから体にぐるっと絡ませて1回転してそのまま終わりのポーズに移行します。このスピンの解き方の工夫は曲想を反映できていますし、スムーズで素晴らしいと思います。

 

その他

 

このプログラムは、彼の持つ静かな抒情性といいますか、内に秘めた感情に光を灯すかのような表現が活かされているな、と思います。個人的には曲名が「Lighthouse」ということで、鬱々とした森あるいは霧を抜けて灯台に照らされる様子をイメージするのですが、皆さんはどう解釈するでしょうか。

 

また、全体を通して思うのは、曲想に合わせてしっかりトランジションが盛り込まれているな、ということです。実はJGPFでこのプログラムを生観戦したのですが、その時片足でのつなぎや滑走が素晴らしいという感想を抱きました。加えて、つなぎがしっかり入っている中それらを自然にこなすところは、全体的な流れを生み出すのに一役買っているな、と思います。

 

あと実はこのシーズン、SPについては大会で、転倒はおろかステップアウトすらなく、非常に安定した演技が続いていました。全ての演技で76点以上と、ジュニアの中ではかなり高い点を連発し、このシーズンの躍進を支えていました。相性の良いプログラムだったんでしょうね。

 

そしてこのプログラムは、ロシアの方が運営している、彼のファンクラブの間でも人気1位になるぐらいで、彼の代表的なプログラムといってもいいのではないかと思います。願わくば彼の「初期の」代表作、といえるようになってほしいですが。昨シーズン含め最近は怪我に苦しんでいますが、きちんと治して、また素敵な演技やプログラムをどんどん見せていってほしいです。

 

素人なのでターンなど間違っている箇所がありましたら、遠慮なくお知らせください。自分の思考をぶちまけただけの文章になってしまいましたが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

 

ヤシの木